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櫻井八つ YATTSU Sakurai

 

​2010 年頃から、古紙を漉き直し、庭で精製した蜜蝋を使い描いています。

湿度で変形・融点約62 度。気候危機の中、生物と共に朽ちる絵画でもあります。

この絵が溶けて無くならない世界、つまり私たち生き物が存在し続けられる世界を願い

その問いかけと共に、鏡の中の自分を見つめ直すように心の中に潜む、

怖くてもユーモラス、泥臭くても美しくあろうとする姿を描き起こします。

1981 年 埼玉県生まれ 在住
2004 年 多摩美術大学造形表現学部デザイン科卒

2001 年 グループ展を歯切りに個展・グループ展・その他活動を続けている

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ステートメント (詳細)

 

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集めた古紙が持っていた本来の意味・過去・ストーリーも含めた自作の再生紙は、規定の形にこだわらず 半立体の支持体であり、バックボーンを持つ物体として存在します。
そして「漉き直し 新たに描く」という行為は 廃れては生まれ変わる事への希望のような安らぎを案じています。

手漉き再生紙のディテールと蜜蝋の特性により思い通りに描くのが難しいのですが、 自分の意志と偶然との、折り合いを付けたものが出来上がる面白さがあります。 折り合いを付けていく事。
気候危機の中、私たちはどうしていったら良いのか。 おそらく多くある答えのひとつが、この「折り合いをつけていく事」のような気がしています。 自然界の秩序に調和し損ねた、私たちの中にある自然 ( 身体・感性 ) が、ズレを補うかのように、 日常の中に違和感となって現れています。環境とメンタルの関係は、直結していることが分かります。 その 些細で 重要な「違和感」を認識し、その理由を辿り、結果として現れる心の中に潜む姿、 心の空洞・隙間・暗闇からの表情や光景。そして、それらを癒す美しい何か。

両極端にあるものの間で浮遊し折り合いをつけながら生きる。 そんな事を考えながら描いています。

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経緯

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16 歳くらいから 独学で絵を描き始めました。

大学ではデザインを専攻しましたが、卒業後は絵を描く事を選び、様々な経験をしながら描き続けています。 その中でも 2006年に1年間八重山諸島にある西表島で過ごし、民宿で住み込みアルバイトをしながら絵を 描くことに集中し、島の自然を体感した事が、その後の制作と人生に影響を与えました。

その影響のひとつとして、今まで使用してきた画材を見直しました。 当時、アクリル 絵の具で 絵を描いていたのですが、島の人に「絵の具の排水は、排水溝に流さないで土に捨てて欲しい」と言われ、衝撃を受けました。
かつてジュゴンが民家近くの浜にもくるほど海は綺麗だった事、 目の前にある海へ排水はそのまま流れている事などを聞いて、 自然を敬いながら破壊活動をしている自分に気付かされました。

島から戻り罪悪感の少ない画材を探し、2010 年頃から地元の養蜂家から蜂蜜を絞り終えた「巣」を譲り受け、 自宅の庭で 3 日ほどかけて精製した「蜜蝋」を絵の具として使用しています。

同時期に、アトリエとして借りていた旧幼稚園の整理をしていると、使われなかった卒園証書や包装紙などの 大量の古紙が出てきたので、それらを漉き直し作品に使用したのをきっかけに、 キャンバスからオリジナル再生紙を支持体とするようになりました。

 

 

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